《秋のヴァナディール創作祭》参加作品
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偽りの花嫁 -Decoy Angel- 前編
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このテキストは『偽りの花嫁 -Decoy Angel-』の脚本をサイト公開用に加筆修正したものです。
映像化する上で削除した台詞も含むため、実際の作品とは異なる箇所があります。
* * *
秋
年に一度の狩猟大会に沸き返るサンドリア王国
かつては王室禁猟地として一切の狩猟を禁じられていた東ロンフォールだが、この日ばかりは手に手に弓を携えた騎士達がチョコボにまたがり森林を縦横に駆け巡っていく
バストゥーク国籍の冒険者アンジュリークが見物人の中にいる
ひと通り祭を見て回り、人いきれに息苦しさを覚えたアンジュリークは龍王ランペールの墓の前に移動する
狩場から遠ざかりようやく辺りが静けさに包まれる
ほっとしたアンジュリークは、ふと壁の向こうから人の声がすることに気付く
「このように手の込んだ真似などせずとも、一声お声をおかけいただければどこへなりとも参上いたしますものを………」
呆れたような女の声
深みのある男の声がそれに答える
「鉄面皮でよそよそしい態度と共にであろう? それでは意味がないのだ。なぜ、そうまでして余を避ける?」
「避けるなどとんでもない。わたくしは自らの役目を全うしているまで」
「やはりその傷が原因なのか………。余が深手を負わせたその日から、そなたは余を避けるようになった………。」
「同情なさると? 全ては神聖な御前試合の場で起きたこと。無用な情けは騎士の面に泥を塗るがごときもの、傷の痛みより恥辱で憤死しそうですぞ。」
「クリルラ、余は──────…」
「用がないならこれにて失礼致します。」
冷たく言い放つ声と共に、その場を去っていく気配がある
物陰から聞き耳を立てていたアンジュリーク
(これって修羅場? 痴情のもつれ?)
好奇心旺盛なアンジュリークは足音を忍ばせつつ声のしてきた方へと歩み寄る
壁の向こうで、ドサリと重い音
そっと覗き見ると、美しい白と金の鎧に身を包んだ一人の騎士が草地の上に大の字に横たわっている
仰向けのまま瞳を閉じ、じっと動かない男
まさか女に振られたことを苦に自らの命を──────、焦ったアンジュリークが慌てて飛び出していく
「ダメですっ、振られたくらいで死ぬとかぜったいダメですっ!!!」
叫びながら男の肩をわし掴みにする
「──────!?」
「振られたくらいで死んでたらわたしなんて命がいくつあっても足りません!! 起きて下さいっ!!」
「な、何か勘違いをしておらぬか…」
「……ん?」
よくみれば鎧の騎士はアンジュリークに激しく揺さぶられ目を白黒させている
「あら。生きてましたか」
「なんという乱暴な………。近頃の令嬢は皆そうなのか?」
「令嬢? あたし冒険者ですよ?」
騎士が立ち上がり、優雅な仕草で肩についた青草を払い落とす
「とにかく、女の子に振られたくらいでヤケになっちゃダメです!! 自分を悲劇の主人公みたいに思っちゃダメなんですからね!?」
騎士は口元に深い笑みを浮かべ、
「はは、そなたは強いな。さぞかし殿方からも引く手数多なのだろうな?」
「だったらこんなとこで油売ってないですよ。大体そこらの男共は人のことガサツとか男女とか、言いたい放題なんですから!!」
「面白い娘だな、名はなんと言う?」
「あたしはアンジュリークです。傷心の騎士様のお名前は?」
「余か、余は………」
不意にガサガサと物音がする
「む、もう追いつかれたか」
「あなた追われてるんですか?」
「そういうわけではないが、ちと大事な席をすっぽかしたものでな。そなた冒険者なら移動魔法が使えるのではないか?」
「使えますよ。今ならテレポにデジョンIIもおつけして大特価一万ギルでご提供いたします!」
「金を取るのか…、今は持ち合わせがないのだが」
「担保でもかまいませんよ? あとできっちり取り立てに伺いますから。」
「ふむ、ではこれを渡しておこう。落ち着いたらドラギーユ城に赴くがよい。」
母子像の意匠が目を引く美しい指輪を手渡される
「オッケー、んじゃいきますよ? 騎士様のホームポイントがどこか知りませんけど!!」
「──────余にも分からぬ」
「まぁ大丈夫でしょ。いっけぇ〜!!」
デジョンIIが発動し、その場から消え去る騎士
ガサガサと物音が近付いてくる。巻き込まれるのはごめんだとばかりにアンジュリークもデジョンでその場を去る
ドラギーユ城門前
「ドラギーユ城………ってここのことかな?」
城門で衛兵に咎められる
「女、ここは他国の者が気軽に立ち寄っていい場所ではない」
「あのねぇ、あたしはここに来いって言われたのよ?」
「紹介状でもあるのか?」
「ないわよそんなもん。これを担保に預かっただけよ」
「こ、これは国宝の指輪ではないか!! 貴様、一介の冒険者がなぜそのような物を持っている?」
「えぇっ、知らないわよそんなの!!」
「怪しい奴、ひっとらえろ!!」
「ちょ、ちょっと──────!!!」
ボストーニュ監獄にぶち込まれたアンジュリーク
「出しなさいよっ!! レディをこんなカビくさい所に閉じ込めるなんて信じらんない!! ちょっと聞いてんの?」
いくらわめいても看守は見向きもしない
不意に、クックッと低く笑う声がする
「レディって──────また随分とガサツなレディがいたもんだな」
「誰よあんた!!」
向かいの独房に閉じ込められた男がアンジュリークの姿を笑いながら見ている
「誰って言われてもな。運悪くとっつかまった正義の盗賊?」
「どうせしょーもないコソ泥でしょ。」
「まぁ否定はしねェが………お嬢ちゃん、あんたさっき指輪がどうとかわめいてたな?」
「あ〜聞いてくれる? あたし通りすがりの騎士様を助けたのよ、そしたらさぁ──────」
アンジュリークの話に耳を傾ける男
「ふむ、それで手渡されたのが指輪だったと…」
「そうなのよ!! 来いっていうから来てやったのに、こんな仕打ちってある!?」
「なぁ、その指輪には小さな母子像が刻まれてなかったか?」
「あったわよ。藍色の宝石が使われてて値打ちものっぽかったなぁ。」
「そうか、あれは今王子の手元にあるのか……」
「え、何か言った?」
男はフッと笑った。
「別にィ。オレもう寝るからさぁ、わめき散らして起こすのはナシな?」
「誰がっ!!」
翌朝
遠くで看守が通路の扉を開ける音がする
カツカツと響く足音に目を覚ますアンジュリーク
とっくに起きていたらしい向かいの男が呟く
「たぶんあんたのお迎えだな、お嬢ちゃん」
「お迎え?」
「嫌疑が晴れたんだろうよ。せいぜい慰謝料ふんだくってやんな」
「……ねぇ、アンタなんでこんなとこに入れられたの?」
男はかすかに目を光らせる
「そうさな、復讐…ってとこ?」
「復讐?」
男は不意に独房の扉に身を寄せ、アンジュリークに囁いた。
「なぁ、あんたがもし王子に近づけるなら─────ゆんべ言ってた指輪、取り返せねぇか? 金ならいくらでも払うぜ。オレに雇われてみねぇ?」
《選択肢》
・とりあえず話を聞いてみる
・冗談じゃない ← 冗談じゃない を選択
「ちょっと、あたしに悪事の片棒担げっての?」
「悪事か。はは、お嬢ちゃんにとっての悪事ってなんだ?」
「そりゃ、人の物を奪うとか、人の命を奪うとか……」
「そんなら大罪を犯したのはこの国だ。オレはオレの物を取り返してるにすぎねェ」
「あんた、一体………」
看守が姿を現す
「アンジュリーク、そなたの嫌疑が晴れた。宰相がじきじきにお会い下さるそうだ、こちらへ参られよ」
アンジュリークは檻を出る際ちらりと向かいの独房に目をやった。
男は隅に移動したのか、姿が見えなかった。
「本当に、なんと詫びたらよいものか……」
宰相ハルヴァーが気難しい顔で言う
「それはもういいってば。それよりあの騎士様はなんで来ないのよ?」
「我が息子は多忙なのだ、冒険者よ。今も作戦会議室で実弟と論議を交わしておるわ」
威厳のある声が響く
「え、ひょっとして国王陛下!?」
慌てたアンジュリークが、現れたデスティン王をまじまじと見る
「そうだ、頭が高いぞ冒険者よ」
ハルヴァーの言葉に国王はからからと笑い、
「なに、かしこまらずともよい。時に娘よ、我が息子が狩猟大会を抜け出したというのはまことか?」
(えぇっと、この人が国王ってことは、あの騎士様って王子様!? 王子様が女の子に振られてたなんて言っちゃっていいのかな?)
アンジュリークは混乱のあまりぐるぐると回転しそうな頭で必死に答える
「は、はい。お墓の入口でたまたまお会いしまして。」
国王は溜め息をつき、
「困ったものだ。国を挙げて執り行う由緒ある定例行事を第一王子がすっぽかすなど……」
ハルヴァーが相づちを入れる
「護衛の者達がまかれるとは、トリオン様の逃走技術も年々磨きがかかっていますな。」
「なんならそなたが息子に張り付いて寝ずの番でもするか? ハルヴァーよ」
「あ、いや、わたくしめは」
国王はアンジュリークの方に向き直った。
「冗談じゃ。それをするのはおなごの務め、そうは思わぬか?」
「え?」
「早うに妃を娶らねば、我が息子も落ち着くことはなかろうて──────」
「え、えっ?」
焦るアンジュリークに、ハルヴァーが溜め息をつきながら口を挟んだ。
「勘違いするな。第一王位継承者のお相手だ、そなたのような一介の冒険者に務まるはずもなかろう。我らはとある事情でそなたを雇いたいのだ。」
ハルヴァーの話はこうだった。
ここ数ヶ月、トリオン王子の花嫁にふさわしい女性をリストアップしている。その誰もが家柄・容姿ともに申し分のない淑女なのだが、なぜかリストアップされた途端謎の失踪を遂げてしまう──────
「そこで我らは腕の立つ冒険者を偽の花嫁候補として雇い、身辺の動きを探ってもらうことにしたのだ。」
ハルヴァーの言葉にアンジュリークは首を傾げた。
「王子様はこのことをご存知なのですか?」
国王とハルヴァーは顔を見合わせた。
「息子は何も知らぬ。頭の固い奴のことだ、花嫁候補が次々に失踪していると知ったら一生妻など娶らぬと言い出しかねぬわ。」
王子様は好きな人がいるんじゃなかったっけ? ──────アンジュリークは胸中で呟く。
「いいですよ、引き受けましょう。」
「おぉ、まことか!!」
「ただし報酬はたっぷりいただきますよ?」
「それは案ずるな。なにしろ国家の明日がかかっているからな………頼んだぞ、冒険者よ。」
その日からアンジュリークはドラギーユ城に寝泊まりすることになる
宮中での礼儀作法を教えるミガイフォング、護衛役のロミディアン、下にも置かぬ扱いを受け好奇心いっぱいに日々を過ごすアンジュリーク
敵がどこに潜んでいるか分からないため、作戦を知るのは国王とハルヴァーとアンジュリークの三人のみである
ハルヴァーからは、決して王子には一人の女性として接しないように、ただし周りからは仲睦まじい恋人同士と見えるようにと、少々難しい注文を受ける
再会したトリオン王子はアンジュリークを見て目を丸くする
「おぉ、そなたか。ハルヴァーから聞いたぞ。我が城で貴婦人となる為の手ほどきを受けているそうだな?」
「そうなんですよ〜、あたしの溢れる知性が目に留まったみたいで!!」
「はは、貴婦人を目指すならその言葉遣いはいかんな。あたしでなくわたくしと言わねば」
「いっけない、ミガイフォングさんに叱られたんでした」
「あの温厚なミガイフォングに叱られたと?」
「はい、王子様の前では決してそのような言葉遣いをするなと──────今、王子様の前ですよね……すみません」
「この城はしきたりを重んじるうるさがたが多いからな、周囲に人がいる場所では気をつけた方がよかろう。…だが、余と二人きりの時はありのままのそなたで構わんぞ? 余も諸国の事情に通じた者と忌憚なき意見を交わしたかったところだ──────それに」
「それに?」
「…余の恋愛相談に乗ってくれそうな者など他にはおるまい?」
ニヤリと笑うトリオンに、アンジュリークも満面の笑みで答える
「それはもうお任せ下さい!!」
夜
与えられた私室でその日の出来事を振り返るアンジュリーク
トリオンから聞かされた話が脳裏に蘇る
「余はクリルラに一生かかっても償えぬ深い傷を負わせてしまったのだ………。あれが気丈な女だということは重々承知している。だが仮にも嫁入り前の身、醜い傷を顔に負うて悲嘆に暮れぬ娘はおるまい? 傷の具合も気になる、なんとか会って話をしたいが、その件以来あれは余を避けるようになってしまってな。余は許しを請う機会すら失ってしまったのか? 叶うならば一生をかけてでも罪を償いたいと願うのだが………アンジュよ、どう思う?」
アンジュリークは鏡台の前で思案に暮れる
(確かに嫁入り前の顔を傷モノにされるのはつらいなぁ………責任とって一生面倒みてよね!! くらい言っちゃいそう)
(でも、傷ついてもいいってくらいその人のことを好きだったらどうだろ?)
(怪我をさせた義務感で一生そばにいられたら……あたしだったらそのほうが……つらい……かも……)
翌日
東ロンフォールで神殿騎士団の演習が行われると聞き、こっそり覗きに行くアンジュリーク
女だてらに颯爽と指揮をとるクリルラ
(騎士団の人達ってカッコいいなぁ……あはは、ロミディアンさんもいる〜。)
小隊を率いているロミディアンは、別の小隊を率いる黒衣の装束の男(ドゥルマイユ)と時々話をしている
(クリルラさまはどんな男性がお好みなんだろ? ロミディアンさんに聞いても教えてはくれないだろうなぁ。ここは直接本人に聞くしかないよね!!)
演習が終わり、クリルラはロミディアンとドゥルマイユを伴いドラギーユ城に向かっていく
なんとかクリルラに突撃取材できないものかと、アンジュリークは後を追う
ドラギーユ城内
扉の前にロミディアンとドゥルマイユを残し、謁見の間へと消えて行くクリルラ
アンジュリークが柱の陰からちらちらと覗き見していると、直立不動の体勢で扉の前に控えていたドゥルマイユがその場を離れ、アンジュリークの隠れる柱のほうにまっすぐ歩いてくる
(や、やばっ、こっちに来る……!?)
「貴様そこで何してる」
逃げようとしたが間に合わず、ドゥルマイユに二の腕を掴まれる
「どうしました」
ロミディアンが近付いてくる
「不審者だ。さっきから妙にウロチョロしてやがる」
険しい表情で歩み寄るロミディアンは、しかしドゥルマイユに捕えられているのがアンジュリークであることに気付き、呆気にとられる
「アンジュリーク様…。何をなさっておられるのです?」
「あ、ロミディアンさん! この馬鹿力に離すように言ってよ! 」
「お前コイツの知り合いなのか?」
ドゥルマイユの問いにロミディアンが答える
「知り合いも何も、今私が護衛の任を仰せつかっているのがこの女性なのですが……」
「あぁ、コイツが例の花嫁候補サマか。」
「痛いってば、離しなさいよ!!」
ドゥルマイユがアンジュリークの上腕を掴んだままぐいと身体を引き寄せ、顔を覗き込みながらニヤリと笑う
「何が花嫁候補だよ、どっからどう見てもガサツな冒険者じゃねぇか」
「なんですって!?」
「ドゥルマイユ、よさないか。その人の手を離せ」
「っせぇな。コイツはずっとクリルラ様の後を尾け回してたんだぜ、何が目的だ?」
「しっ知らないわよ!! あたしはロミディアンさんに用があっただけなんだから!!」
「嘘つけ。正直に言わねぇと痛い目見せんぜ」
「やめろ、ドゥルマイユ!!」
ロミディアンが声を荒らげる
睨み合うロミディアンとドゥルマイユ
「……チッ」
ドゥルマイユがやれやれと両手を広げ、掴んでいた腕を放す
「しんっじらんない、なんなのコイツ!!」
「アンジュリーク様、お詫びなら私からいたします。どうかお怒りになりませぬよう」
「お前いつからそいつの飼い犬になったんだよ、ロミディアン」
「ドゥルマイユ……」
ドゥルマイユの矛先がロミディアンに向くのを見て、アンジュリークが人差し指をドゥルマイユにつきつける
「ちょっと!! あたしの悪口は構わないわよ、ロミディアンさんを悪く言うのはやめて!!」
「ハッ、何だよご主人様気取りか?」
「なんですって、この…」
「──────なぁ、花嫁候補サマよ」
ドゥルマイユが馴れ馴れしくアンジュリークの顎に手をかける
「金か地位か、お前が欲しいのは何だ? どこの馬の骨が王子の妃になろうと知ったこっちゃねぇが、クリルラ様には近付くんじゃねぇ」
「……っ!!」
思わず平手打ちをかまそうとするが、一瞬早くロミディアンがドゥルマイユを殴り倒す
「ドゥルマイユ、いい加減にしないか!!」
「いってぇな!! ……あ〜あ、やってらんねぇ。俺先に帰るわ」
「なっ…待て、ドゥルマイユ!! まだ任務の途中だろう!!」
「クリルラ様にはあとで謝っとくって。じゃあな〜」
ヒラヒラと手を振ってドゥルマイユが去ってしまう
「誠に申し訳ありません、アンジュリーク様」
深々と頭を下げるロミディアンに、アンジュリークが慌てて手を振る
「あ、いいのいいの、ロミディアンさんのせいじゃないから!! ねぇ、あいつなんなの?」
「彼は私と同じく小隊を率いる騎士団員です。口は悪いですが、非常に腕の立つ男です」
「腕っぷしが強ければいいってもんじゃないでしょ。騎士様の中にあんなのがいるなんてガッカリだよ………」
「耳の痛いお言葉ですね。彼はクリルラ様のお身内ということで多少の言動は多めに見られているのですが、やはり改めさせるべきなのでしょうね。」
「身内って親戚か何かなの?」
ロミディアンはややためらう気配を見せるが、アンジュリークにじっと見つめられて口を開く
「彼はクリルラ様のお父君に拾われた孤児なのです。クリルラ様とはご姉弟同然に育てられたのだとか。ところでアンジュリーク様、ここへはどういったご用事で?」
《選択肢》
・ロミディアンについて聞いてみる!!
・うまくごまかして退散しよう… ← 退散しよう… を選択
「ロミディアンさんとお話がしたかったんだけど、なんだか疲れちゃった。今日はもう寝るね。」
「かしこまりました。また明日お迎えにあがります。」
「ありがと、またね。」
翌朝
ロミディアンを伴い城内を歩いているアンジュリーク
(う〜ん、どうやってクリルラさまと二人きりになろうかなぁ。)
廊下の向こうから護衛を引き連れたトリオンが近付いてくる
「アンジュリーク、今日は天気も良いし遠出に行こう。用意はいいか?」
「あ、はい!!」
「ロミディアン、アンジュをしばし借りるぞ。」
「は。では私は離れた場所からお供させていただきます」
「あぁ、頼む。では行こうか、アンジュリーク」
「ごめんなさい、トリオンさま。クリルラさまに突撃取材をしようとしたけど失敗しちゃいました。」
ラテーヌ高原、オルデール鍾乳洞へと続く谷間の一角
ふわふわと綿毛を揺らす白い花が咲き乱れるその場所で、トリオンとアンジュリークはピクニックよろしく敷物を広げている
「なに、クリルラに突撃取材? そなたも随分と無茶をするものだな。」
トリオンについていた護衛も、ロミディアンも、二人の声の届かない離れた場所から警護に当たっている
「大丈夫ですよ、トリオンさまの名前は絶対に出しませんから。女同士にしかできない恋バナってやつをしようかな〜って。」
「コイバナ……? 聞かぬ単語だな、近東の言葉か? まぁ確かにあれの周りは男ばかりだからな。アンジュが親しき友となってくれればあれの気も休まるかもしれぬ。」
「それにしてもクリルラさまってカッコいいですよねぇ!! あたしびっくりしちゃいました。ふふ、もしあたしが男だったらトリオンさまのライバルになってたかもしれませんよ?」
「むう、それは強敵だな。」
トリオンが屈託なく笑う。
離れた場所から見守る護衛の騎士達の目には、さぞかし仲の良い恋人同士と映ったであろう。
「そうだ、トリオンさま。お城に戻ったら少しだけロミディアンさんを足止めしてもらえませんか?」
「それは構わんが、何をするつもりなのだ?」
「今度こそクリルラさまに突撃してきます。期待してて下さいね!!」
「あまり無理をするでないぞ。」
「はーい。」
城に戻った二人
王子がロミディアンを足止めしている隙に、クリルラの様子を見に行く
ドゥルマイユを相手に剣の稽古をしているクリルラ
他の騎士団員はいない
王国一の誉れも高いクリルラの剣技が素晴らしいのはもちろんだが、ドゥルマイユの両手槍の腕前もかなりのものである
片目を失って間もないクリルラは遠近感のなさからうまく相手との間合いを掴むことができず、動きに焦りが見てとれる
クリルラの剣がドゥルマイユの槍に弾かれ、音を立てて宙に飛ぶ
一瞬動きを止め戸惑うドゥルマイユ
クリルラがすかさずドゥルマイユの懐に飛び込み、みぞおちに拳を叩き込む
地面に膝をつくドゥルマイユ
「なぜ攻撃の手をゆるめた、ドゥルマイユ」
「……それは」
「みくびるな。こちらが隻眼だからとて敵が手加減すると思うのか? これでは稽古にならん、今日はここまでだ。」
地面に膝をついたままのドゥルマイユに背を向け、つかつかと去って行くクリルラ
ドゥルマイユが呟く
「クリルラ様……」
物陰に潜み一部始終を見ていたアンジュリーク
(クリルラさま、なんだかお気の毒………。片方の目をなくされても王国一の剣士の名は守らなくちゃならないのね。参ったなぁ、なんだかお話を聞ける雰囲気じゃないみたい。)
クリルラの後ろ姿が見えなくなる
視界の先でドゥルマイユがゆっくりと立ち上がる
宙に弾け飛んだクリルラの剣を拾い上げると、ドゥルマイユは手にした剣に視線を落とし、黙って白銀の刃に唇を触れさせる
(……え?)
見てはいけないものを見てしまったような気になり、焦るアンジュリーク
(え、今のなに? クリルラ様の剣にキスしてた? あいつひょっとしてクリルラ様のことが好きなの?)
動揺した気配が伝わったのか、ドゥルマイユがアンジュリークの隠れている柱をジロリと見る
(やばっ、また見つかっちゃう!!)
あわててその場から離れるアンジュリーク
離れた場所でほっとしながら角を曲がると、目の前にドゥルマイユがいる
「よう、また会ったな」
道を塞がれて焦るアンジュリーク
「あ、えぇっと……えへへ、コンニチハ」
「コンニチハじゃねぇよ。てめぇ見てたな」
「な、なんのこと?」
とぼけるアンジュリークを無視してドゥルマイユがアンジュリークを壁際に追いつめる
「なぁ、教えてくれよ花嫁候補さんよ」
アンジュリークの背が壁に当たりそれ以上後ずさりできなくなる
壁に両手をつきアンジュリークの身動きを封じるドゥルマイユ
「アンタどうやってあのカタブツの王子を落としたんだ? どこまでやらせてやった?」
「…し、失礼ね!!」
「もう寝たのか?」
「─────っ!!」
平手打ちをかまそうとするが、易々と腕を掴まれる
アンジュリークは何か言い返そうとするが、自分の顔を覗き込むドゥルマイユの顔が狂気をたたえているのに気付き、ビクッとして口を閉じる
「クリルラ様はずっと前から王子のことが好きなんだ。それなのにぽっと出のお前が我が物顔で城をウロウロしやがって!! あの方がどんな思いをされているか分かるかッ!?」
「そ…んな……あたしは…」
「俺はあの方のためならなんだってする。…何が花嫁候補だ。傷モノにしてやったら花嫁の資格もなくなるか!?」
ドゥルマイユがアンジュリークに手を伸ばす
《選択肢》
・助けを呼ぶ
・ひっぱたく ← ひっぱたく を選択
ドゥルマイユの頬を思いっ切りひっぱたくアンジュリーク
「なめんじゃないわよ!!そんなにクリルラさまが好きなら、コソコソしないでどーんと当たって砕けなさいよ!!」
「んだと、このアマ…」
「告白するのが怖いの!?」
キッと自分を見据えるアンジュリークにドゥルマイユが舌打ちする
「くっそ、てめぇなんぞに何が──────」
「分かるわよ!? あたしなんてね、告白しちゃあ振られ、告白しちゃあ振られ、玉砕した回数ならヴァナ・ディール中の誰にも負けないんだから!!」
ドゥルマイユが呆気に取られる
「も、もちろん、振られてばっかりじゃないわよ? あたしから振ってやったことだってい〜っぱいあるんだからね!!」
「………」
絶句していたドゥルマイユが、壁から手を離しクックッと笑い出す
「な、何がおかしいのよ」
「いや……あんたが振られた理由、な〜んか想像つくと思ってよ」
「な、──────」
「オトコオンナはいやだとか、おしとやかな子がいいとか、どうせそんなんだろ?」
アンジュリークが真っ赤になる
「図星かよ。あ〜ハラ痛てぇ」
むっとするアンジュリークだが、ドゥルマイユがあまりに可笑しそうに笑うのを見て文句を言うのをやめる
「とにかくね。あんたがクリルラさまを本気で好きなのは分かったから、特別に教えてあげるわ」
「あ?」
「あたし花嫁候補なんかじゃないの」
「──────え…」
事の次第を説明するアンジュリーク
「…マジかよ…」
「もうこれであたしを敵視する理由はないわね?」
「そ、それは」
「それはじゃないわよ。秘密を知ったからには協力してもらうんだからね!!」
「えぇ〜」
「じゃなきゃクリルラ様に言いつけるわよ!!」
「分かったよ、クソッ」
「レディに向かってクソとか言うのや〜め〜な〜さ〜い〜。」
「誰がレディだって……」
「あたしをレディ扱いするのも作戦のうちなのよ?」
「チッ…、一介の兵士が過ぎた事を言いまして申し訳ございませんお嬢様〜。」
「それでよし」
「なんで俺がこんな目に………」
ぼやきかけたドゥルマイユが、ふと顔を引き締め、周囲を見回す
「──────!?」
「どうしたの?」
ドゥルマイユは油断なく視線を巡らせるが、やがて嘆息し肩の力を抜く
「いや、なんでもねぇ。なんか見張られてる気がしたんだが…」
「えぇっ、敵かな?」
「だから気のせいだっての。」
「それならいいけど……」
その日の夜更け
皆寝静まり、静寂に包まれていた城内が不意に騒がしくなる
騒ぎを耳にし目を覚ますアンジュリーク
「え…なんだろ?」
扉を開けると衛兵が控えている
「お休みのところお騒がせして申し訳ございません。実はボストーニュ監獄から囚人が一人脱獄しまして」
「え?」
「賊はまだ捕まっておりません、念のため今宵は窓を閉めてお休み下さい。」
部屋に戻ったアンジュリークは窓辺に近寄る
「脱獄って、こないだのあいつじゃないよね?」
呟きつつカーテンに近付いたアンジュリークは、閉めておいたはずの窓が少し開いているのに気付く
(あれ? カギ閉めてなかったっけ?)
「──────あいつってオレのこと?」
不意に背後から男の声が響く
目を見開くアンジュリーク
ギルド桟橋
「離してってば!! どこに連れてく気なのよ?」
エフィールゴに捕われたアンジュリークが声を上げる
「まさか、あんたが失踪事件の犯人なの?」
「あぁ? なに訳分かんねェこと言ってやがる。オレの目的は指輪だって言ったろ、観念してさっさと出しな」
「何を……言ってるの……?」
「とぼけんじゃねぇよ、今はお前がアレを持ってんだろ? 今すぐよこしやがれ!!」
アンジュリークが声を張り上げる
「あの指輪ならトリオンさまが持ってるわよ!! 国宝だって分かったんだもの、頼まれたって持ち歩くもんですか。あたしが持ってるなんて誰に聞いたのよ?」
「なんだと、そんなはずは…」
「あんた、あたしがトリオンさまの花嫁候補だからさらったんじゃないの?」
「花嫁候補だぁ?それがオレと何の関係があるってんだ!!」
「どうなってるの……?」
戸惑いを隠せない二人
その時、不意に二人は複数の武装した男達に囲まれる
「無事役目を果たしたようだな。ご苦労だった、エフィールゴ」
リーダー格の男が二人の前に姿を現し、そう告げる
「ロドルフか……。おい、どうなってる? あんたこの女が指輪を持ってるって言ったよな?」
エフィールゴが声を張り上げる
「言ったがどうした、何か不都合でも?」
「ざけんじゃねェ!! コイツはなんも持ってねぇじゃねェか!!」
「そうか、そいつはすまなかった」
「てンめぇ……!!」
エフィールゴが血相を変え、手にしたカルバリンを向けるが、周囲の男達に一斉に取り押さえられる
身動きを封じられたエフィールゴとアンジュリーク
ロドルフはエフィールゴには見向きもせず、拘束されたアンジュリークに近付いてくる
「これはこれは、お初にお目にかかります。麗しき花嫁候補様」
わざとらしく一礼しながらロドルフが笑みを浮かべる
「まさか、あんた達が失踪事件の真犯人?」
「おや、これは聡いお嬢さんだ。今回はやけに毛色の変わった娘を選んだものだと思っていたが………なるほど。宰相から何か言い含められているな?」
「さぁ、どうかしらね。」
「てめェら何を企んでやがる……」
エフィールゴが顔を歪めながら言う
「知りたいか? いいだろう。どのみちお前達二人を生きて帰すつもりはない。冥土の土産に教えてやろう」
男が芝居がかった仕草で両手を広げてみせる
「この国ではしばらく前から第一王子の花嫁候補が次々に失踪してるのさ。なぜだと思う?」
エフィールゴが唇を歪める
「ンなんオレが知るかよ、クソッ」
「王子が妃を娶れば王位継承者としての地盤はより固くなる。本来なら喜ばしいことなのだろうが、この国にはそれを良しとしない一派が存在するのさ。」
「二人の王子の確執? 街の噂で聞いてはいたけど……」
アンジュリークが呟く
「その通り。第二王子ピエージェ様擁立派に雇われて、我々がここにいるってわけだ。もちろんピエージェ様ご本人はあずかり知らぬことだがな。」
「それがオレと何の関係がある!!」
「関係? 関係などないさ。貴様はタイミングよく現れただけだ、スケープゴートを探していた我々の目の前にな。」
「なんだと……」
「お前は偽の犯人に仕立て上げるにはうってつけだったろう? なにしろあの警備の目をかいくぐり、見事この女をさらうことに成功したんだからな。花嫁候補は賊の手にかかり、その賊は我らに討ち取られる。邪魔者が全ていなくなる完璧なシナリオだ」
「………!!」
「恨むなら第一王子を恨むんだな。──────殺れ」
冷たく放たれた指示を受け、二人を取り囲んでいた者達が一斉に武器を振り上げる
突如、強烈な閃光弾が炸裂し、その場にいた全員が視力を奪われ硬直する
アンジュリークの背後で激しい物音がし、複数の男達の呻き声が響く
何が起きているのか分からず焦るアンジュリーク
不意に何者かにぐいと腕を引かれ、訳が分からぬまま走り出す
徐々に視力が戻ってくる。ファノエ運河へと続く入り組んだ洞窟内部を走っているようだ
プリズムパウダーを使っているらしく、自分の腕を引き先に立って走る者の姿を見ることはできない
洞窟の半ば辺りでアンジュリークの腕を引いていた者が不意に立ち止まり、腕を放すと荒い息をつきながら言う
「追っ手はまいたみてぇだな。ったく手間かけさせやがって」
「その声、ドゥルマイユなの!?」
「誰だと思ったんだよ、え?」
プリズムパウダーの効果を切ったらしく、ドゥルマイユの姿が目の前に現れる
アンジュリークは信じられないものを見るようにドゥルマイユの顔をまじまじと見つめる
「な、なんであんたが……」
「あぁ? 協力しろっつったのはてめぇだろ? つーかさ、カネで雇われた冒険者のクセにあっさり誘拐されてんじゃねえよ、ばーか」
「お、お礼なんか言わないんだからね?」
「んだと、かっわいくねーなこの女!!」
「あ〜、お取り込み中のところ失礼しますよ」
呆れ返った声が背後で響く
二人が振り向くと、エフィールゴがニヤニヤ笑いながら立っている
「助けてもらった礼を言いにきたんだが、何? オレがあっさり言っちまったら、ツンデレちゃんの見せ場が台無し?」
ドゥルマイユがじろりとエフィールゴを睨みつける
「何だてめぇは。てめぇなんざ助けた覚えはねぇぞ」
「まぁまぁ、そう固いこと言わず」
「はーん、ボストーニュ監獄から逃げたのはてめぇだな? 脱獄はれっきとした重罪だ、見逃す訳にゃいかねえな。」
「おっ、何? オレとガチでやりあおうっての?」
睨み合う二人
「ちょっと待ってよ、今は争ってる場合じゃないでしょ!?」
後方から複数の足音が響いてくる
前方からも近付く足音に、ドゥルマイユが思わず舌打ちする
「しゃあねぇ、ここはいったん休戦だ。おいコソ泥、てめぇも手を貸しな」
敵の姿を睨みながら両手槍を構えるドゥルマイユに、カルバリンを肩に担ぎ上げたエフィールゴがニヤリと笑う
「不本意ながら従うとしますかね。」
アンジュリークを挟むようにして、二人が背中合わせに武器を構える
「来るわよ!!」
