* * *
(Hal) …えと。話の腰を折るようで申し訳ないんですが
ライとエンゾの話に耳を傾けていたハルが、顔を上げるとおずおずと言った。
ライが肩をすくめ、黙って続きを促す。
(Hal)そちらのPTは五人いたってことですよね? その……キラさん、って方が見当たらないようですが
エンゾは頷き、低い声で呟いた。
(Enzo) その通りだ。キラは二日前にここから脱出した
(Sakura) え
サクラが戸惑った表情を浮かべ、隣に座る美影に視線を投げる。
(Sakura) ど、どうやって?
(Mikage) 幽境の帰巣蛍を使ったのよ。アサルトの戦利品の???ボックスの中に一つだけ入っていたの
(Hal) 帰巣蛍…って、アサルトとかサルベージの時にテンポラリで手に入る脱出用アイテムですよね。箱に入っていたってどういうことです?
美影はわずかにかぶりを振り、
(Mikage) 理由は分からないわ。ただ、テンポラリのものとは明らかに違ってた………Ex/Rareじゃないし、そもそも幽境の帰巣蛍なんて聞いたこともないしね
(Enzo) なんにせよ、それが脱出アイテムだろうと見当をつけた俺達は負傷したキラを外に出すことに決めたんだ。キラ本人はいやがっていたがな。
(Tetsu) 無事ですかね、キラさん
(Ray) でなきゃ困るだろ。ここまで探しても出口が見つからないとなると、外に出たあいつだけが頼みの綱だ
(Hal) でも、…あのですね
ハルが口を挟む。ハルは言いにくそうに、
(Hal) アサルトに参加した冒険者が行方不明になったという話は特に聞いてないですよ? そんな事故があったら大騒ぎになりそうなもんですけど
(Tetsu) まじっすか……
(Ray) なんにせよ、キラの無事を確かめる術はねぇ。ここにいる限りはな
ライの発した言葉に、ハルはふと口を閉ざし、ライの顔を見据えた。
(Hal) …だからさっき、誰が箱を入手したか訊いたんですね。俺らの手に入れた???ボックスの中にも幽境の帰巣蛍が入っていると──────?
ライは肩をすくめ、そっけなく言った。
(Ray) 入ってるかもしんねぇし、入ってないかもしんねぇな。確かめる必要がある、今すぐに
(Sakura) あの箱はイザクさんが持ったままです……イザクさんだったモノが、と言うべきかもしれませんが
ぴくりと、美影が身体を震わせた。ライはそれに気付いたがあえて声をかけることはせず、
(Ray) ラミアが一度手に入れた人形を手放すはずはねぇ。マスターであるラミアごとイザクをぶっ倒すしかねえだろうな。目当ては荷物の中身だけなんだが、それを言って通用する相手でもないだろう
(Tetsu) いっそシーフで来ればよかったですね。【ぬすむ】だけで事が足りるならそれに越したことはないし
(Enzo) ないものねだりをしても仕方なかろう
(Tetsu) そうですけど……
Mikage >> ねぇ、エンゾ
美影からの裏Tellが突然届き、エンゾが美影の顔をさりげなく見返す。
>> Mikage : どうした?
Mikage >> どうしたじゃないわよ。イザクがなんでここにいるの? しかも、ついさっき死んだなんて………
エンゾは密かに溜め息をつき、
>> Mikage : うむ、もう少し早く発見できていればな。残念だ
Mikage >> 残念!? 残念ごときで済む話?
>> Mikage : 落ち着け、美影
Mikage >> どうやったら落ち着けるっていうのよ!!
美影が歯を食いしばり、遠くの海に視線を投げる。
Mikage >> あんたとライの反応の方が不自然だわ。どうしてそんなに落ち着いていられるの?
>> Mikage : ………実は何日か前、俺達はすでにイザクを見つけていたんだ
Mikage >> え
美影は目を見張り、エンゾの顔を見据えた。
>> Mikage : 伝えなかったのは悪かったと思っている。だが、奴はどうやら過去の記憶を失っていたようでな………引き合わせるのが得策だとは思えなかったんだ。お前のためにも、イザクのためにも
Mikage >> そんなのあなた達が決めることじゃないでしょうッ………
>> Mikage : …そうだな。すまなかった
美影からのTellが途絶えるのとほぼ同時に、ライからの裏Tellがエンゾの元に届いた。
Ray >> まさかこんな形でイザクと再開するとはな…
>> Ray : うむ。あの男とはつくづくタイミングが合わないらしい
Ray >> やれやれ。美影になんて言おうか
>> Ray : 心配するな。もう話した
Ray >> って早ぇなオイ!! ま、損な役回りを引き受けてくれて助かった
>> Ray : 訊かれたから答えただけさ。──────それにしても、どう思う?
Ray >> 何が?
>> Ray : 今回の一件だ。俺達のPTだけなら何かのバグとも思えたが、イザクのいるPTまでここに閉じ込められたとなると………
Ray >> …バグでも偶然でもねぇってか
>> Ray : 俺達五人が一ヶ所に揃うのは四年振りだ。それを一番望んでいたのは誰だ?
Ray >> 組織の……仕業だってのか……
目を細めるライを見下ろし、エンゾは低い声で告げた。
>> Ray : ライ。お前は躊躇なくやれるか?
Ray >> ……何を
ライがぶっきらぼうに問い返す。
>> Ray : イザクのことだ。正直、美影がイザクにトドメを刺せるとは思えん。お前はやれるか?
Ray >> …俺がやらんでどうするよ
感情の見えない声でライが答え、エンゾはかすかに頷いた。
(Enzo) 日が落ちる前に行動を起こした方がよさそうだな。ラミアを見失ったら元も子もない。ハルさん、怪我の具合はどうだ?
(Hal) いただいたハイポのお陰でだいぶ楽になりました。これならいけます
(Enzo) よし。いったんアラを解消して1PTに組み直そう。美影、引き続きリーダーを頼む
(Mikage) ……えぇ
硬い声音で呟く美影にちらりと視線を投げ、ライが口を開きかける。
だが、結局何も言わぬまま、ライは口を固く引き結び、目をすがめて遠くの空を見上げた。
to be continued...
